⚪︎基本情報
チロシンは非必須アミノ酸の一種で、体内では必須アミノ酸の一種であるフェニルアラニンから合成されています。チロシンは、神経細胞の興奮や抑制を伝達するアドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質の原料となっています。さらに成長を促進したり、代謝や自律神経の調整を行う甲状腺ホルモンや、髪の毛や皮膚の黒色色素であるメラニン色素の原料となっています。
チロシンは神経や脳の働きをサポートするために必要なアミノ酸で、うつ病の改善、認知症の予防に効果的だとされています。
⚪︎チロシンを含む食品と性質
チロシンは、苦みを感じる成分としてバナナやアボカドなどの果物に多く含まれます。
チロシンは糖分と一緒に摂取すると吸収が良くなる性質があり、果物から摂取することで効率良く摂取すること可能です。
チロシンを含む果物のひとつにりんごがあり、りんごは切ってしばらくすると変色します。これはりんごに含まれるチロシンが空気に触れ、チロシナーゼという酵素が働くことで酸化し、メラニン色素を生成する事により起こります。
そのため、塩水につけたり、レモン汁につけたりしてチロシンを空気に触れさせないようにしてりんごの変色を防ぐ事が出来ます。
また、たけのこをゆでると白い粉末が出ますが、これはチロシンが結晶化したものとなります。
⚪︎チロシンの過剰症・欠乏症
メラニンはチロシンを材料にしてつくられるので、過剰に摂取すると肌のシミやそばかすを発生させやすくする可能性が高くなります。メラニンとは、肌を紫外線から守る働きをする黒色色素になります。
チロシンは血圧の上昇を招くノルアドレナリンの量を増加させるので、注意して摂取する事が必要です。
またチロシンが不足すると、甲状腺ホルモンや脳内で働く神経伝達物質の分泌が減少し、代謝活動の減衰やうつ状態を引き起こす恐れが高くなります。さらにメラニン色素の生成が妨げられるので、白髪の原因にも繋がります。
さらにチロシンは、成長を促す甲状腺ホルモンの材料となるため、成長途中である乳幼児がチロシンの摂取不足になると発達障害や成長障害を引き起こす要因となります。
⚪︎チロシンが生み出す甲状腺ホルモンの働き
チロシンは、人間の成長や代謝を促進する甲状腺ホルモンの材料となっています。
甲状腺ホルモンは、細胞の生まれ変わりを促進するので、子どもの成長には欠かせないホルモンとなります。
この甲状腺ホルモンが過剰に分泌されると、交感神経が刺激されるため、動悸や手の震えが起きます。
一方で甲状腺ホルモンが不足すると身体の代謝が正常に行われなくなり、集中力の低下やむくみ、心筋梗塞の要因となる動脈硬化や高脂血症を誘発するコレステロール値の上昇などを引き起こす原因となります。
⚪︎うつ症状を改善する効果
チロシンは脳を興奮状態にしてやる気を起こさせるドーパミンや、脳を緊張状態にし集中力を高めるノルアドレナリンの材料となるため、うつ状態の治療に効果的です。ドーパミンやノルアドレナリンが脳内で不足すると、無気力や無関心を引き起こし、うつ病に繋がります。
チロシンはドーパミンやノルアドレナリンの前駆物質となるだけでなく、うつ状態のときに脳内のチロシンの濃度が低下しているということも明らかとなっていることから、チロシンにはうつ症状を改善する効果があるとされています。
⚪︎集中力を高める効果
脳内の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンが不足すると、物事の関心や意欲が薄れ、集中力が低下してしまいます。
チロシンは脳を活性化させるドーパミンやノルアドレナリンの前駆体であることから、集中力を高める効果を持ちます。
⚪︎ストレスをやわらげる効果
チロシンは、ストレスや疲労の緩和に効果的です。
人間は強いストレス状態にあると、アドレナリンやノルアドレナリンを消費し、些細なことでも攻撃的に反応します。チロシンはアドレナリンやノルアドレナリンの前駆体となるため、神経機能を調節することでストレスを緩和する効果を持ちます。
チロシンのストレスに対する効果について行った研究では、軍隊の厳しい訓練で、チロシンを摂取した兵士は、摂取していない兵士よりもストレスへの抵抗が強かったという結果が出ました。
また、チロシンは「慢性疲労症候群」を改善する効果を持ちます。
慢性疲労症候群とは、何か精神的・身体的な原因があるというわけではないにも関わらず、長期間に渡って激しい疲労感が現れる症状となります。女性に多くみられる症状で、生活環境によるストレスなどが原因となる事が多いです。
チロシンは神経伝達物質を生成することで脳の働きを活発にし、慢性疲労症候群を改善する効果が期待出来ます。
⚪︎白髪を予防する効果
チロシンは、体内でメラニン色素を生成することで黒髪を形成し、白髪を予防する効果があります。
メラニン色素は、紫外線から細胞の核であるDNAを守るために存在します。DNAが紫外線などによってダメージを受けると、ガンなどの重大な病気を引き起こす原因に繋がります。そのため、黒い髪は細胞を紫外線から頭皮を守っていると言えます。
白髪は、老化や栄養不足、ストレスなどで色素細胞の機能が低下し、メラニン色素をつくることができなくなってしまうことが原因で起こります。
チロシンはメラニン色素を生み出すことで、黒い髪を形成する働きを持ちます。