バリンは体内で合成することができない必須アミノ酸の一種で、ロイシン、イソロイシンとともにBCAA(分岐鎖アミノ酸)に分類されています。筋肉中のたんぱく質を構成するアミノ酸はBCAAの割合が多く、その中のひとつのバリンは、筋肉の強化に効果的なアミノ酸になります。バリンはその他にも、体の成長を促進する働きや血液の窒素バランスを調整する効果、さらにはアンモニアの代謝を改善する効果、肌のハリを保つ効果など様々な効果を持っています。
また、バリンは食欲不振の改善にも効果があるといわれており、医薬品として総合アミノ酸製剤に含まれます。その他、低たんぱく質血症や低栄養状態、手術前後のアミノ酸補給のために静脈注射や点滴などにも利用されます。
⚪︎バリンを含む食品
バリンはレバーや子牛肉などの肉類、脱脂粉乳やプロセスチーズ、落花生に多く含まれます。バリンは体内で合成することができない必須アミノ酸になります。必須アミノ酸は全部で9種類ありますが、どれか1種類でも不足していると十分に働くことができず、その結果、肝臓や腎臓の負担が増加することで免疫力の低下につながってしまいます。
バリンは、ウニの苦み成分として知られていますが、少しの甘みを持つことから、食品添加物としても利用されます。このようにアミノ酸の中には、バリンのように苦みを持つものや、アラニンやグルタミンなどのように甘みを持つもの、さらにグルタミン酸のように旨みを持つものがあります。
バリンをはじめとするアミノ酸は、味の調整のために用いられる調味料や、即席スープ、漬物などに用いられ、味にコクをつけるために昆布茶や合成酢にも活用されます。
⚪︎バリンの過剰症
バリンは、多くの食品に豊富に含まれているため、通常不足することはありませんが、体内で生成することができないため、推定平均必要量として成人で体重1kgあたり、1日26mg摂取することが推奨されています。
またBCAAはバリン、ロイシン、イソロイシンの3種類のバランスが保たれることで本来の効果を発揮するため、どれかひとつでも摂取が多くなると、体重の減少やブドウ糖の代謝、アンモニア排出の阻害を招く可能性が高くなります。
そのため、特定の食品からではなく、なるべく多くの食品からバリンを摂取すると、BCAAをバランス良く保てるようになります。
⚪︎筋肉を修復する効果
バリンは、筋肉中のたんぱく質を構成する上で重要なアミノ酸となります。またバリンを含むBCAAは、激しい運動後に傷ついた筋肉を修復するのに効果的です。
さらに、バリンは筋肉で消費されるエネルギー源でもあり、多くのアミノ酸は肝臓で分解されてエネルギーに変換されますが、バリンはグリコーゲンや遊離アミノ酸が減少した時に筋肉で消費されるエネルギー源となります。
血液中には窒素が存在し、窒素を取り込むことで筋肉が成長しますが、体内に存在する窒素と、体外に排泄された窒素の量の差である窒素バランスが正常でなければ筋肉は成長出来ません。
血液中の窒素バランスが崩れると、体はバランスを整えようと筋肉組織を破壊して体外に窒素を放出してしまいます。
バリンは窒素が放出されマイナス状態になった窒素のバランスを調整し、プラスにすることで筋肉の破壊を防ぐ働きを持っています。
⚪︎肝硬変を改善する効果
バリンを含むBCAAは肝硬変患者の症状を改善する効果を持ちます。
肝硬変になると芳香族アミノ酸の血中濃度が高くなる一方、BCAAの濃度が低くなります。このようなアミノ酸のバランスの崩れは、肝性脳症や、まれに昏睡状態を引き起こします。現在では、肝性脳症の予防をしながら必要なアミノ酸が補えるように、BCAAを用いた製剤も発案されています。
また、肝硬変になると血中のアルブミン量が減少してしまいます。アルブミン製剤とともにBCAAを投与すると、肝臓のたんぱく質の合成が促され、それに伴い、血清アルブミンの量も増えると言われています。
BCAAはこのように、肝硬変患者の症状を改善する効果も持っています。
⚪︎美肌効果
バリンはエラスチンを構成することで、肌のハリを保つ効果を持ちます。
エラスチンは肌を内側から支え、ハリを保つために欠かせない成分でバリンを含む5種類のアミノ酸が80%~90%を占め、全体で800以上ものアミノ酸から構成されます。
人間の皮膚は大きく分けて、表面から角質層、表皮層、真皮層に分かれます。真皮層の厚さは約2~3mmで、主にコラーゲンとエラスチン、そして水分を保持しているヒアルロン酸などで構成されます。
バリンは肌のハリを保つコラーゲン同士を結び付け、肌を内側から支えるエラスチンを構成することで、肌のハリや弾力を保つ効果を持ちます。